早わかり特定商取引法
(7)業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法など)
[1]特定商取引法の規制対象となる「業務提供誘引販売取引」
1.取引形態(法第51条)
「業務提供誘引販売取引」とは、次に掲げるものをいいます。
1物品の販売(またはそのあつせん)又は有償で行う役務の提供(またはそのあつせん)の事業であつて、
2商品又はその提供される役務を利用する業務※1に従事することにより得られる業務提供利益を収受し得ることをもつて
3相手方(消費者)を誘引し、
4その者と特定負担※2を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「業務提供誘引販売取引」という。)をするものをいいます。
※1この業務は、その商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんを行う者が自ら提供を行い、又はあつせんを行うものに限られます。
業務の種類は限定されていません。
※2特定負担とは、取引に際してする商品の購入若しくはその役務の対価の支払い又は取引料※3を提供することをいいます。
商品や役務の種類は限定されていません。
※3取引料とは、取引料、登録料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、取引をするに際し、又は取引条件を変更するに際し提供される金品をいいます。
[2]業務提供誘引販売取引に対する規制(特定商取引法による規制)
(1)氏名等の明示(法第51条の2)
事業者(業務提供誘引販売業を行う者)は、業務提供誘引販売取引をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方(消費者)に対し、次の事項を告げなければなりません。
1事業者の氏名又は名称
2特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨
3勧誘に係る商品又は役務の種類
(2)禁止行為(法第52条)
事業者は、業務提供誘引販売取引についての契約の締結について勧誘をするに際し、又は業務提供誘引販売取引についての契約の解除を妨げるため、次の事項につき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはなりません。
一 商品の種類及びその性能若しくは品質又は施設を利用し若しくは役務の提供を受ける権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして経済産業省令で定める事項
二 特定負担に関する事項
三 契約の解除に関する事項
四 その業務提供誘引販売業に係る業務提供利益に関する事項
五 その他その業務提供誘引販売業に関する事項であつて、業務提供誘引販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
2 事業者は、業務提供誘引販売取引についての契約を締結させ、又は業務提供誘引販売取引についての契約の解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはなりません。
3 事業者は、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所、代理店その他の経済産業省令で定める場所以外の場所において呼び止めて同行させることその他政令で定める方法により誘引した者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において、業務提供誘引販売取引についての契約の締結について勧誘をしてはなりません。
(3)広告の表示(法第53条)
事業者は、広告をするときは、その広告に、その業務提供誘引販売業に関する次の事項を表示しなければなりません。
一 商品又は役務の種類
二 業務提供誘引販売取引に伴う特定負担に関する事項
三 その業務提供誘引販売業に関して提供し、又はあつせんする業務について広告をするときは、その業務の提供条件
四 その他経済産業省令で定める事項 ※
2 事業者は、業務提供誘引販売取引について電磁的方法により広告をするときは、その広告に、その相手方がその広告に係る業務提供誘引販売業を行う者から電磁的方法による広告の提供を受けることを希望しない旨の意思を表示するための方法を表示しなければなりません。
※経済産業省令で定める事項は、次のとおりです。(省令40条)
1事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
2事業者が法人であつて、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、業務供誘引販売業を行う者の代表者又は業務提供誘引販売業に関する業務の責任者の氏名
3商品名
4電磁的方法により広告をするときは、事業者の電子メールアドレス
相手方の請求に基づかないで、かつ、その承諾を得ないで電磁的方法により広告をするときは、その広告の用に供される電磁的記録の表題部の最前部に、「未承諾広告※ 」と表示しなければなりません。
(4)誇大広告等の禁止(法第54条)
事業者は、業務提供誘引販売取引について広告をするときは、その業務提供誘引販売取引に伴う特定負担、業務提供利益その他の経済産業省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはなりません。
(5)書面の交付(法第55条)
<契約締結前の概要書面の交付>
事業者は、その業務提供誘引販売取引に伴う特定負担をしようとする者(その業務提供誘引販売業に関して提供され、又はあつせんされる業務を事業所等によらないで行う個人に限る。)とその特定負担についての契約を締結しようとするときは、その契約を締結するまでに、経済産業省令で定めるところにより、その業務提供誘引販売業の概要について記載した書面をその者に交付しなければなりません。※
※経済産業省令で定める業務提供誘引販売業の概要について記載した書面には、次の事項を明記しなければなりません。(省令43条)
一 事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあつては代表者の氏名
二 商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の種類及びその性能若しくは品質に関する重要な事項又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容に関する重要な事項
三 商品名
四 商品若しくは提供される役務を利用する業務の提供又はあつせんについての条件に関する重要な事項
五 特定負担の内容
六 契約の解除の条件その他のその業務提供誘引販売業に係る契約に関する重要な事項
七 割賦販売法の規定に基づく抗弁権に関する事項
<契約締結後の契約書面の交付>
事業者は、業務提供誘引販売契約を締結した場合において、その業務提供誘引販売契約の相手方がその業務提供誘引販売業に関して提供され、又はあつせんされる業務を事業所等によらないで行う個人であるときは、遅滞なく、次の事項についてその業務提供誘引販売契約の内容を明らかにする書面をその者に交付しなければなりません。
一 商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の種類及びその性能若しくは品質又は施設を利用し若しくは役務の提供を受ける権利若しくは役務の種類及びこれらの内容に関する事項
二 商品若しくは提供される役務を利用する業務の提供又はあつせんについての条件に関する事項
三 特定負担に関する事項
四 契約の解除に関する事項
五 その他経済産業省令で定める事項 ※
※経済産業省令で定める事項は、次のとおりです。(省令44条)
一 事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあつては代表者の氏名
二 業務提供誘引販売取引についての契約の締結を担当した者の氏名
三 契約年月日
四 商品名及び商品の商標又は製造者名
五 特定負担以外の義務についての定めがあるときは、その内容
六 割賦販売法の規定に基づく抗弁権に関する事項
(6)行政処分および罰則
特定商取引法による規制に違反した事業者は、業務改善指示(法第56条)や業務停止命令(法第57条)等の行政処分のほか、罰則(法第70条〜)処分の対象となります。
(7)業務提供誘引販売契約の解除(クーリング・オフ)(法第58条)
事業者が業務提供誘引販売契約を締結した場合におけるその業務提供誘引販売契約の相手方※は、契約締結後に交付される書面を受領した日から起算して、20日以内であれば、書面によりその業務提供誘引販売契約の解除を行うことができます。
※相手方は、その業務提供誘引販売業に関して提供され、又はあつせんされる業務を事業所等によらないで行う個人に限られます。
>クーリング・オフの効果
契約の解除(クーリング・オフ)があつた場合においては、
1.事業者は、業務提供誘引販売契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができません。
2.商品の引渡しが既にされているときは、その引取りに要する費用は、その事業者の負担とされます。
3.これらの規定に反する特約でその相手方に不利なものは、無効とされます。
(8)業務提供誘引販売契約の申込又はその承諾の意思表示の取消し(法第58条の2)
相手方は、事業者が業務提供誘引販売契約の締結について勧誘をするに際し次の行為をしたことにより、相手方が次の誤認をし、それによつて業務提供誘引販売契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができます。
一 不実のことを告げる行為をしたことにより、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
二 故意に事実を告げない行為をしたことにより、その事実が存在しないと誤認した場合
(9)業務提供誘引販売契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限(法第58条の3)
事業者は、業務提供誘引販売契約の締結をした場合において、その業務提供誘引販売契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次に掲げる場合に応じて定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払をその相手方に対して請求することができません。
一 商品又はその権利が返還された場合は、商品の通常の使用料の額又はその権利の行使により通常得られる利益に相当する額(商品又は権利の販売価格に相当する額からその商品又はその権利の返還された時における価額を控除した額が通常の使用料の額又はその権利の行使により通常得られる利益に相当する額を超えるときは、その額)
二 商品又はその権利が返還されない場合は、その商品又はその権利の販売価格に相当する額
三 業務提供誘引販売契約の解除がその役務の提供の開始後である場合は、提供されたその役務の対価に相当する額
四 業務提供誘引販売契約の解除がその商品の引渡し若しくはその権利の移転又はその役務の提供の開始前である場合は、契約の締結及び履行のために通常要する費用の額
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