早わかり特定商取引法
(2)訪問販売
[1]特定商取引法の規制対象となる「訪問販売」
1.販売形態(法第2条)
「訪問販売」とは、次に掲げるものをいいます。
一 事業者(販売業者又は役務提供事業者)が営業所等以外の場所において、
売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結して行う商品、権利の販売
又は役務提供契約(役務を有償で提供する契約)の申込みを受け、若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供
二 事業者が、営業所等において、
営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者(キャッチセールス等)その他政令で定める方法により誘引した者(特定顧客)から
売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品、権利の販売
又は特定顧客から役務提供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供
2.政令で定める指定商品、指定権利、指定役務
「指定商品」とは、国民の日常生活に係る取引において販売される物品であつて政令で定めるものをいいます。「指定権利」とは、施設を利用したり、役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるものをいいます。「指定役務」とは、国民の日常生活に係る取引において有償で提供される役務であつて政令で定めるものをいいます。
特定商取引法における訪問販売、通信販売、電話勧誘販売に関する規定は、政令で指定された商品・権利・役務についてのみ対象になります。
政令で指定された商品・権利・役務の一覧
3.適用除外(法第26条)
特定商取引法の規定は、次の販売又は役務の提供で訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に該当するものについては、適用されません。
一 事業者間取引
二 海外居住者との契約
三 国又は地方公共団体が行う販売又は役務の提供
四 特別法に基づく組合、公務員の団体、労働組合がその組合員に対して行う販売または役務の提供
五 事業者がその従業者に対して行う販売又は役務の提供
[2]訪問販売に対する規制(特定商取引法による規制)
(1)事業者の氏名等の明示(法第3条)
事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、消費者に対して、次の事項を明らかにしなければなりません。
一 事業者の氏名(名称)
二 契約の締結について勧誘をする目的であること
三 販売しようとする商品若しくは権利又は役務の種類
(2)書面の交付(法第4条、法第5条、経済産業省令で定める事項)
事業者は、契約の申し込みを受けたときや契約を結んだときには、次の事項を記載した書面を消費者に渡さなければなりません。
一 販売価格又は役務の対価
二 代金の支払の時期及び方法
三 商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期
四 契約の申込みの撤回等に関する事項
五 経済産業省令で定める事項 ※
※経済産業省令で定める事項は、次の通りです。(省令3条)
1事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
2契約の締結を担当した者の氏名
3契約の締結の年月日
4商品名、商品の商標または製造業者名
5商品の型式または種類(権利、役務の種類)
6商品の数量
7商品に隠れた瑕疵がある場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
8契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
9そのほか特約があるときは、その内容
(3)禁止行為(法第6条)
訪問販売においては、次の不当な行為は禁止されています。
1 不実の告知(6条1項)
次の事項について、事実と違うことを告げる行為
一 商品の種類・性能若・品質、権利・役務の種類・内容その他これらに類するものとして経済産業省令で定める事項
二 販売価格(役務の対価)
三 代金(対価)の支払の時期及び方法
四 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
五 申込みの撤回(契約の解除)に関する事項
六 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
七 その他、契約に関する事項であつて、顧客、購入者、役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
2 事実の不告知(6条2項)
契約勧誘に際して、前項一から五までの事項について、故意に事実を告げないこと
3 威迫して困惑させること(6条3項)
4 目的を隠した勧誘(6条4項)
目的を告げないキャッチセールスやアポイントメントセールスなどにより誘引した消費者に対して、公衆の出入りしない場所で、契約締結について勧誘すること
(4)行政処分および罰則
特定商取引法による規制に違反した事業者は、業務改善指示(法第7条)や業務停止命令(法第8条)等の行政処分のほか、罰則(法第70条〜)処分の対象となります。
(5)契約申込の撤回または契約の解除(クーリング・オフ)(法第9条)
訪問販売により、消費者が契約を申し込んだり、契約をした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から起算して8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面により申し込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。
>クーリング・オフの効果
申込みの撤回等(クーリング・オフ)があつた場合においては、
1.事業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償、違約金の支払を請求することができません。
2.商品の引渡し、権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、事業者の負担とされます。
3.役務提供、指定権利の販売契約については、申込みの撤回等があつた場合に、既に契約に基づき役務が提供され、施設が利用されたときにおいても、申込者等に対し、役務の対価その他の金銭の支払を請求することができません。
4.事業者は、申込みの撤回等があつた場合において、金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければなりません。
5.申込者等は、申込みの撤回等を行つた場合において、申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、事業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができます。
6.これらの規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とされます。
(6)契約の申し込みまたはその承諾の意思表示の取消し(法第9条の2)
事業者が、契約の締結について勧誘する際、次の行為をしたことにより、消費者が誤認して、契約の申し込みやその承諾の意思表示をしたときは、その意思表示を取り消すことができます。
一 事実と違うことを告げられたため、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
二 故意に事実を告げられなかったため、その事実が存在しないと誤認した場合
(7)契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限(法第10条)
消費者の債務不履行などにより契約が解除されたときは、事業者は、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次に掲げる場合に応じてそれぞれ定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を、消費者に対して請求することができません。
一 商品が返還された場合は、通常の使用料の額(販売価格から転売可能価格を引いた額が、通常の使用料の額を超えているときはその額)
二 商品が返還されない場合は、販売価格に相当する額
三 役務を提供した後である場合は、提供した役務の対価に相当する額
四 商品引き渡し前(役務提供前)である場合は、契約の締結や履行に通常要する費用の額
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